私には96歳の祖母がいる。
大きな社員食堂で長年働き、退職したのは80歳くらいだっただろうか。
雨の日はカッパを着て、強い風にも負けず、暑い夏も寒い冬も、
朝元気に自転車をこいで出勤していました。
70代で自転車に乗って、時間にすれば5分~10分くらいだったのだろうか。
昔はそんな祖母の姿を「すごいな~」とは思っていたけれど、
今46歳になった私からすれば、とんでもく凄いことだと頭が下がる。
仕事が楽しいなんて、なかなか思えない人が多いだろうけど
祖母が仕事に向かう自転車にまたがる時は、いつもニコニコしていた印象がある。
私は大人になるまでの間、家族が壊れてしまったりいろんなことがあって、
素直になれない時期があった。
祖母と父親と私、3人暮らしのときがあった。
仏頂面(ぶっちょうづら)の私にも、祖母はいつも態度を変えることなく優しかった。
振り返れば、なんて申し訳ない態度をとっていたんだろうと猛省する。
夕方になると度々来客があった。
祖母の職場の人たちだ。
その頃の私はうっとうしく思って、顔を出すこともしなかったが、
食堂の余ったおかずを届けてくれたりしながらいつも数人で、
退職したあとも祖母の顔を見に来てくれていたのだ。
玄関からは、近況を伝えるいつも明るい声が聞こえてきていた。
人は誰かの悪口など良くない話をするとき、ついひそひそ話になる。
でも、祖母と職場の人たちはいつも明るい声で話していたのを今でも覚えている。
それを最近になって思い出す出来事があった。
玄関の会話の記憶から15年経ち、祖母はデイケアに通うようになっていた。
私の幼なじみが理学療法士で、祖母のお世話をしてくれた。
祖母や父とも長いこと離れて暮らしていた私に、
幼なじみが写真や動画を送ってくれて、祖母の近況を知らせてくれた。
祖母はデイケアで人気があるというのだ。
しかめっ面をすることがない、人の悪口を言うことがない、
いつもニコニコしている祖母は、デイケアのスタッフさんたちの愛されキャラだと
幼なじみに言われた。
そうだ、昔から変わってない。
祖母が周りに優しくするのは、何十年経っても変わっていなかったのだ。
今になってやっと、祖母の人柄に涙がこぼれる。
私はこんな祖母のように、歳を重ねていきたい。

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